結構な腕前で!
第五章
 裏山の部室への上り下りも、不意に現れる魔との戦いにも相当慣れて来たある夕方。
 茶道道場の前に部員が集まっていた。

「今日は道場解放日でしたっけ」

「いや、それはまだ先。今日は道場で稽古しようと思いまして」

 せとかが道場に掛けられた古めかしい南京錠に、これまた古めかしい大きな鍵を差し入れる。

「せとかぁ。せとみ部長がいないのに大丈夫~?」

「漏らしたら、あとでせとみが怖いわよぉ」

「「せとみ部長の怒りは買いたくない~」」

「大丈夫ですよ。まだそれほど魔は集まってないはずです。練習には丁度いい頃合いだと思います」

 そう言って、がちゃりと外した南京錠を床に置く。

「うう、いつもながら重いんだから」

「これ、いい加減最新式にしないの?」

「「カードキーにしちゃおうよ~」」

 双子がぶーぶー文句を言いながら、大きな木の閂を外すべく持ち上げる。
 萌実も慌てて手伝った。

「道場にカードキーは似合いません」

 ちなみに本日裏部長はお菓子のところてんが気に食わなかったとかで欠席である。

「南野さんの力を上手く使う練習ですよ」

 そう言って、せとかは萌実を促した。

「ゆっくり力の質を見極めたほうがいいんでしょうけどね。生憎それに適した道場を使うには、まず中の魔を祓わないといけませんので」

 せとかに手を引かれて道場に入る。
 いつも入るなり魔がぱんぱんに暴れているのに、今はまだふよふよと煙の塊がいくつか宙を泳いでいるだけだ。
< 50 / 397 >

この作品をシェア

pagetop