結構な腕前で!
「ぎゃーーっ! 何っ! いつの間にーー!!」

 絶叫し、萌実は足をどんどんと踏んで煙を落とそうとする。
 が、巻き付いているので、そう簡単に取れない。
 何とも言えない感触に、ぞわぞわと怖気が走る。

「いーやーー!!」

 あまりの気色悪さに、萌実は屈むと、両手で煙を掴んだ。
 そのまま引きちぎるように、力任せに足から外す。

「そいやっ」

 引きちぎった煙を、畳に叩きつけるように投げつけた。
 煙はガラスのように砕けて、その辺りに散らばる。

「……」

 ぜぇぜぇと肩で息をする萌実をぽかんと見ていたせとかが、ぱちぱちと手を叩いた。

「いやぁ、凄い剣幕でしたね。素晴らしい反応です」

 褒めてるんだか微妙な反応だ。
 せとみも双子も、驚いたように萌実を見ている。

「凄ぇな。鮭を仕留める熊みたいだったぜ」

 せとみが追い打ちをかける。
 必死すぎて周りの目など気にしていなかった。
 うう、と、萌実はその場にへたり込んだ。

「まぁまぁ。魔に捕まえられたんだし、驚いても仕方ないよ。でも萌実さんなら素手で触ってもいいから、引きちぎるのも簡単ね」

 でもそんな簡単にちぎれるものだとは思わなかったけど、と慰めながらも最後に落とすはるみに、萌実は立ち直れない気がした。
 こいつ、何気に失礼である。

「僕らは魔を掴んだことはありませんからね。でもまぁ、軽く叩いただけで仕留められるんですから、脆いものとしても不思議ではありません」

 とても軽く叩いてるようには見えないが、微妙なフォローを入れてくれるせとかに、萌実は心の底から感謝した。

「しかし、魔は僕らを捕まえることもできるわけか。攻撃を仕掛けてくるから応戦していたが、捕まったらどうなるんでしょう? さっきのも、南野さんを捕まえたはいいが、その後どうするつもりだったんでしょう」

 いつの間にやらすっかり退治された煙の残骸が散らばる茶室内で、せとかが言った。
 せとみもはるみも、きょとんとしている。
 今まで考えたこともなかったようだ。
 捕まったことなどないからだろう。
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