【短編】雨と先輩
雨と先輩
「わー!傘がない!」



朝持ってきたはずの傘が傘立てから消えている。



「なに、傘ないの?」


「旬くん」



幼なじみの旬くんがあたしの顔を覗き込む。



「これ、使う?俺今日バイトだし」


「だめだよ!旬くん濡れちゃう!すぐそこのバス停だしじゃあね!」


「あ、おい!」



旬くんの言葉を無視して走る。
こうしないと旬くんはあたしに無理やりでも傘をかそうとしてしまうから。



「結構粒が大きいー!」



なんて言いながらカバンを頭に乗せて走る。
こんなの今日の雨には意味無いのだろうけど
少しでも気休めになればと。



「ずぶ濡れ、大丈夫?」



バス停には先客。
傘をも閉じている姿にこの人も今きたばかりなのだと思う。



「大丈夫です…」



人見知りが発揮されてうまく話せない。



「これ、使いなよ」



カバンからタオルを出してくれる。



「え?」


「めっちゃ髪の毛濡れてる。それまだ使ってないから」



ふわっと優しく笑う。

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