散歩道
『まぁ君のって?』

今まで黙って話を聞いていた奈美が、誠也さんに聞いた。

『なんでもないよ。ねっ、誠也さん』

私は必死になって言った。

まぁ君のことには、なるべく触れないでほしい。
どうか誠也さん。
なんとかごまかして。


必死に言わないでオーラを漂わせた。
なのに…


『俺らと一緒に遊んでた頃さ、麻里ちゃんまぁ君って人のこと好きだったんさ』


あーぁ。
言っちゃったよ。この人。
昔から空気読めないんだよ。


『そうだったん?麻里』

『えっ…あっうん。昔ね、昔』

『へぇ!!麻里ってちっちゃい頃から、年上好きなんね』

感心したように言う奈美の言葉に誠也さんも笑った。



違う!!違うんだ〜!!
私はたしかに、ちっちゃい頃から年上好きでしたよ。
そこは認めますよ。
だけど、あの頃好きだったのは。
まぁ君じゃなくて。
まぁ君じゃなくて…



『ねっ、アド教えてよ?昔の話とかしたいし』
俯く私に満面の笑み。


あぁ…
かっこいいな。

こうやって笑顔を見ると、昔と何にも変わってないのに。
どうして気がつかなかったんだろう。


『え〜。やです。笑』

『うわっ!!なにそれ。ひどくね』

『うそですよ!!はい、赤外線で送りますよ〜』

私は自分の携番とアドを赤外線で送った。

『おっ。きたきた。ありがと♪あとで俺からメール送るね』

『は〜い』


やった♪
私も誠也さんのアド知りたかったんだ。
自分からじゃ言えなかったから…
めっちゃ嬉しい!!


『昔のまぁ君ネタで盛り上がろうね♪』

誠也さんはまた、いじわるげに笑った。

私はなんだか悲しくなった。



違う…違うのに…
あの頃私が好きだったのは、せいちゃんなのに。
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