【完】『そろばん隊士』明治編

しかし、と大垣屋は、

「桂はん、いや木戸はんを討たねばならぬ訳を、お聞かせ願えしませんやろか」

と訊ねた。

「まぁ武士の意地のようなもので」

岸島の父は江戸詰めで、同輩に斎藤道場にある者があった。

それが道場の朋輩と女をめぐって果たし合いとなり、その騒ぎに関わったとして斬られたのだが、

「そのおり斬った者が桂小五郎であったと申すのだが」

武家の体面を重視した宮津松平家では、こうした事態を受けて当時勘定方として蔵屋敷詰めであった岸島に仇討ちをすすめ、浪人となった。

「それでまず京へ上ったおり、新撰組は長州を探索しておると聞き、ここならば桂を探せるのではないかと」

「…それで、新撰組へ」

「いかにも」

岸島はうなずいた。



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