Melty Smile~あなたなんか好きにならない~
「御堂さん、私……」

動揺に唇を震わせながらも、自分の為すべきことはしっかりと理解していた。
今すぐ、彼のもとを離れるべきだ。
それから、実家へ帰って両親の無事を確認しなければ。なにしろ、犯人が近くに潜んでいるかもしれない。
私が行ったところでたいしたことはできないけれど、なにかの足しにはなるはずだ、とにかく放っておくわけにはいかない。

「……ごめんなさい、私、行かなくちゃ!」

急ぎオフィスに飛び込んで、机の上に広げていた私物を全部バックに押し込んだ。バッグの中がぐちゃぐちゃだけれど、後回しだ。

「黒木さん、ごめんなさい! 急用が出来てしまって、お手伝いできそうにありません!」

「はあ……」

ドタバタと嵐のようにオフィスを駆け回る私を見て、それ以上なにも言えなかったのだろう、黒木さんは訝し気に頷いた。

御堂さんは難しい顔で腕を組み、オフィスの入口に佇んでいる。
私が廊下に出たところで、私の腕を捕まえて、冷静に問いかけてきた。

「待つんだ。どこに行くつもり?」

「……実家です」

「ひとりで行くのは危険だ。それが犯人の陽動なら、なおさら」

「でも、このままじゃ両親が――」

「華穂が実家に帰ったからといって、犯人が引き下がる保証はない」

「でも……っ!」

それでも、行かなくては。私がこの場に留まり続ければ、事態は悪化するばかりだ。
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