桜色の涙


そして夏祭りのとき。星那からの誘いを断って、俺は学校すら知らない女子と会場に来ていた。


俺に告白してきた人のひとりで、浴衣に染めた髪、厚い化粧という星那とは正反対の格好。隣にいても何も感じなかった。



事件が起こったのはちょうど花火が打ち上がるとき。


花火を見ようと上を向いた瞬間、腕を引っ張られて─────気づけば目の前にいる女と唇が重なっていた。



「は?何してんの」


最悪だ。ただ気を紛らわせるだけの存在だったのに。


俺がキスしたいと思うのは星那だけだったのに、こんな形で知らない女とすることになるなんて。



「えー?したくなっちゃったんだもん」


意味がわからない。俺はお前となんてしたくない。


なんなんだよ。星那の方が何倍も可愛いのに。
< 309 / 374 >

この作品をシェア

pagetop