・喫茶店『こもれび』

カウンター席で肩を並べ。
まるで恋人同士みたいな気分になれる、この時間が好き。


「美味しい。これ、メニューには載ってないですよね? こんなに美味しいのに、どうして載せないの?」

「訳ありサンドだから」

「なにそれ?」

「秘密」

「えー教えてくれてもいいのにー」


意味深に含み笑いしながら、三好さんは珈琲カップに口をつけた。
どんなワケがあるのだろう。などと思いながらも、その訳ありサンドを口に頬張る。

テーブルに肘をつき手に顎を乗せ、三好さんが眺めているのは黙々と食べている私だ。
そんな三好さんの視線を感じつつも、気づかないふりをしていた。


「ソースがついてる」


三好さんの親指が私の唇をなぞり、そのまま口の端へと滑ってゆく。
こういうことを、サラッとしてくるあたりは「女の扱いを知っている人なんだな」って思う。
ドキドキしない子なんていないことを、三好さんは知っているんだろうな。


「あ、ありがと……」

「彩夏ちゃんさ、今日は閉店時間まで居る?」


なに、この意味深な質問。
閉店時間まで居たら、何かいいことがあるの?
もしかして、もしかする?


「そのつもりだけど」

「そっか」
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