副社長のイジワルな溺愛

「あとは? 言われたことを全て言いなさい」
「勤務希望なのか聞かれたくらいです。あとは特にありません。とても丁寧に接してくださいました」
「わかった。もう戻っていい」

 呼び出したのは副社長なのに、話を聞くだけ聞いてサッサと戻るように言われた。
 副社長が冷徹で感情の見えない人だっていうのは知っていたけれど、まさかここまでだとは思わず、私まで不機嫌が移りそうだ。


「戻りました……って、誰もいないし」

 数分の間に全員帰宅していた経理部内で、ぽつんと一人自席に座る。
 そういえば、副社長が今夜は会食があるって言ってたけど……予定が変わったのかな。
 ふとそんなことを思い出しながら、もらってきた領収書とデータを突き合わせ、他にも数件残していた業務を済ませてから社を出た。


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