副社長のイジワルな溺愛

「これでも羽織ってなさい。服より楽だろうし」

 渡されたのは、彼のYシャツ。
 戸惑っている私の肩を押してリビングに残すと、彼は再び洗面室へ戻っていった。


 確かに服を着るよりもゆったりとしていて楽だとは思うけど……。

 今日じゃなくてもいいから、いつか叶えてみたいと思っていたことが現実になって、小さく胸が高鳴る。
 好きな人のYシャツを着てみたいなんて、とても口にできないから、もっとずっと先の未来でしか叶わないと思ってたのにな。


 彼が見ていないのを確認してから、私はYシャツをそっと抱きしめ、ボタンを丁寧に外して袖を通した。



「思ってた以上にいい感じだね」

 リビングに入るなり、声をかけてきた慧さんに振り向くと、Tシャツと麻のリラックスパンツ姿で現れた彼は、ちょっと嬉しそうにしていて。


「私もTシャツでいいです」
「そのままがいいなぁ」
「だって!!」

 “いい感じ”と言われた意味は、彼の視線を見ればなんとなくわかる。
 Yシャツの裾から露わになった太ももが、何とも艶かしくて……。


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