誰も知らない彼女

暗雲


合コンで会った野々村さんと畠さんが亡くなり、一番の友人だった由良と秋帆が派手なケンカを起こした翌日。


クラス内では完全に由良を無視するという嫌がらせが広まっていた。


昨日の6限の体育で由良が連続事件の犯人だと言ったことがきっかけで、由良はクラスで一番の嫌われ者になってしまった。


いっぽうの私はというと、由良が嫌がらせを受けているので反射的に秋帆側についた。


理由はただひとつ。由良を説得しても効果がないからだ。


そして、由良が嫌がらせを受けるようになったのを機に、若葉への嫌がらせはピタリと止まった。


若葉への嫌がらせを実行した張本人が嫌がらせを受けているせいだろうか。


それでも私は由良に手を差しのべることはしない。


また強く引っ張られて、昨日以上の痛みを味わう可能性があるのだ。


一番の友人だったけど、さすがにこればかりは手を貸すわけにはいかない。


約束を破ったからでも連続事件の犯人だと言ったからでもない。


自分に火の粉が降りかからないようにするためだ。


3限の授業がはじまる10分前のこのとき、私は秋帆たちに囲まれていた。


「ねぇ抹里、私たちに話したいことってなに?」


机に教科書などを置く私に、いっちゃんの席に座る秋帆が不思議そうに尋ねた。


そうだ。


由良のことで巻き込まれたくなかったから、3人に話したいことがあると言って私の席まで来させたんだ。
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