誰も知らない彼女

伝染した狂気


「ちょ、ちょっと待って! う、奪ったってなにを⁉︎ 私、あなたに恨まれるようなことした?」


目の前にいる悪魔のような幹恵に恐怖を抱いてるあまり、言葉を詰まらせながら吐きだす。


しかし、『死ねよ』という言葉は本気ようで、再び私の腕をガシッと掴んで憎しげな感情を瞳に宿して私を睨む幹恵。


ありえないほどの力が腕に入って、電気が走る感覚に襲われる。


「わかんないの? あんたは私が今までキープしてたものをどんどん奪ったじゃない! いろいろあるけどね、とくにあんたに奪われたくなかったのはクラスの人気者の地位と成績トップの称号よ」


クラス一の人気と学年成績1位のポジション。


私はいつの間にか自分に舞い込んできたと感じたけど、幹恵にとっては私を憎むくらいにいつまでもしがみつきたかったものだったんだ。


奪うつもりはなかったのに、恨まれるなんて。


普通なら素直に負けを認めて、相手の実力を認めるのが一番じゃないの?


疑問に思ったが、彼女がそのことで私を憎む理由がすぐに思いついた。


さっき幹恵は殺人衝動という言葉を使った。


自分を追い込んでいく相手を殺して、自分のポジションをキープしていたんだと。


もし、私にポジションを奪ったと思っているなら、幹恵は私を殺そうと思うだろう。
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