誰も知らない彼女
その裏山は昔、夜中に入るとそこで運悪く死んだ幽霊に殺されてしまうという噂が広がっていた。


実際、裏山で死んだ人は何人かいたし、別荘に泊まる人はたいてい裏山には登らなかった。


悠くんの別荘に来た人全員、その噂を信じていたから。


そんなことを心の中でつぶやいている間に、裏山の入口前に到着した。


迷うことなくその入口に入っていく。


うっそうとしげった森が不気味な雰囲気を演出しているような感じがして、冷たく吹く風に味方して私の体をさらに震わせる。


靴を通して足で踏む落ち葉はパリパリと硬化した革のような音がしてさみしさがこみあげてくる。


さみしいのは苦手。ひとりは怖い。


なのに私は、ネネを突き放したんだ。


これ以上危害がおよばないようにするために。


はぁ。私ってば、なに考えてるんだろう。


孤独な私には、憎いくらいにこの不気味な森が似合うと思ってしまう。


目を伏せてしばらく歩いていくと、落ち葉の中に変わった模様の落ち葉を見つけた。


それを拾って眺めるように見つめる。


他の落ち葉にはないであろう赤黒い色が不ぞろいの水玉模様を作っていた。


なにかがついたのかと思って水玉模様をこすってみたが、もともとついている模様だからか全然落ちる気配がない。


「…………?」
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