あなたしか見えないわけじゃない

あ、忘れてた。
頼まれていたクリーニングの引き取り。

確か木曜日からの学会に着たいって言ってたな。
今日は月曜日。
昨日、一昨日の土日は彼が用事があるとかで彼のマンションに行っていない。

私は今日と明日は夕方から仕事だし、水曜日も行けるかどうかわからない。
最近は電車で往復だから、深夜勤務の日はあっちに行かない。

今なら彼は仕事だし駐車場は空いてる。
車で行って、買い物をして冷蔵庫の補充をしつあげて、クリーニングの引き取りをして置いて来ようと思った。



5日振りの彼の部屋。

私がいないと少し散らかる。
出しっ放しの洋服。
使ったままのコップやお皿。
くしゃくしゃのシーツ。

冷蔵庫に食料品を補充してキッチンのシンクに置かれたコップに気が付いた。
口紅が付いている。

誰か、女性がここに来た。

ドクンと大きく胸が鳴る。

リビングをグルッと見渡す。リビングの様子に変わったところはない。

恐る恐るベッドルームに入る。
シーツがしわくちゃになっているのはいつものことだけど……香水の香りがした。

彼のじゃない。

心臓の鼓動が早くなり、喉元に心臓があるみたいにどくどくと息苦しい。
いやだ、いやだ。
どういう事?
ここに女性が泊まった?
信じたくない。

こんな時、どうしたらいいの?

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