あずゆづ。

ゆづくんは、最後にそっと私の前にパフェを置いた。

……と、思った時。


「……え」


パフェをそっと置いたゆづくんの手が。

テーブルの上に置いていた私の手の下にすっと滑り込んできた。


「……?」


そしてゆづくんの手が離れたかと思ったら

いつの間にか私の手には小さく丸められた紙が握らされていた。


なんだろう…?


みんなにばれないよう、テーブルの下でそっと紙を広げると。


『終わるまで帰るな
テメエが鼻血噴いた公園にいろ』


荒い文字だった。

でも確かに、ゆづくんからのメッセージだ。


……待ってても…いいんだ…。


自然と顔がにやける。


―――ボンッ


「ぁた…っ」


にやけた瞬間、軽くお盆で叩かれた。

ほんとに自然な動きだったので、みんなはゆづくんに気づいていないみたいだった。


そして、ゆづくんはすっと私たちの席から離れていった。


―――『ニヤニヤしてんじゃねえ』


お盆で叩かれたときに、なんかそう言われたみたいで。


いつものゆづくんと話してるみたいで

やっぱりどうしても、にやにやせずには、いられなかった。



その後、ゆうちゃんやその取り巻きの女の子たち、ひよりとおしゃべりをしていたけれど。


ダメだとわかっていながらも……


私の視線はずっと、ゆづくんに釘付けだったのでした。



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