あずゆづ。

「で、でも……」

「今は好きじゃなくても、付き合ってみて相手のことが分かれば、もしかしたら気持ちが変わるかもしれないじゃん」


ひよりのその言葉を聞いて、ふと、前に言われたゆうちゃんの言葉を思い出した。



―――『絶対惚れさせる』



「………付き合えば、ゆうちゃんのこと、好きになるのかな」

「まあ、王子だし、あずならころっといきそうだよね」


ちょっと、ひより。

ころっとってなによ、ころっとって。



「ひよりさん、そんな軽い女じゃないよあたしゃ……」


流されやすい簡単な女と思われていそうで、残念な気持ちになってがっくりと肩を落とす私。


「……ねえあず」

「はい」

「元気ないときはぱーっと甘い物でも食べに行かない?」



あーずるい。

そうやって食べ物でつるんだ。

ひよりはいっつもそうだ。


今回だけは食べ物につられてやるもんか。

甘く見るなっ。


「マシュマロをふんだんに使った新商品のクレープが出たらしいよ!」

「うん、行こうかな」


ずるい!!!!!

私がマシュマロだいすきだってこと知ってるんだ!

もう、なんでもいい!!
マシュマロ食べるからいい!!


どんなクレープだろう、と想像していた時気づいた。

……ひよりと放課後に甘い物食べに行くなんて久しぶりだ、ってことに。


だって最近は放課後までずっとずっと、ゆづくんと一緒にいたんだから。



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