運命は二人を


しかし、彼女は、一人ではなかった。

背の高い、端正な顔立ちの男性と、向かいあっている。

そして、彼が彼女の両方の頬に、軽くキスをした。

まるで、恋人同士の抱擁のように。

なんだ、彼がいたのか。

そうだよな、あんなにチャーミングなのだから、いないはずないだろうな。

二人の様子を見ながら、一人納得した。

やはり、そう言う運命なんだな。

俺は、そう自分に言い聞かせて、帰国の手続きを取った。

日本には、付き合い始めた彼女がいるのに、俺は一体何がしたかったのか。

笹本めぐみ、五才年下の彼女は、取り引き先の御令嬢だ。

粗末に扱うことは、出来ないのだ。

わかってはいる。

でも、自分で決めたことなのに、何故か心が全く動かない。

< 12 / 86 >

この作品をシェア

pagetop