王太子殿下は無垢な令嬢を甘く奪う
 今夜の同伴は婚約承諾の返事だけだったのであれば、まだ断ることはできる。

 多少周囲の目が気にはなるだろうけれど、まだ神の意に背くようなことはないのだから、堂々としていればいい。


「俺は君に初めて会ったあの日から四年間、今日のこの日を心から待ち望んでいた」

「ウィル……」

「俺が初めて自分の意志で成し得るのが、王太子妃の指名なんだよ」


 真剣だった表情は、ふっと柔らかさを取り戻す。

 いつもの優しいウィルが戻ってきたようで、マリーは瞳に安堵を滲ませた。


「マリーアンジュ。一緒に来てくれるね?」

「……はい……」

「世界中の誰より君を愛しているよ、マリー」

「ウィル……っ、私も貴方を――……」


 彼の気持ちに応えようとした言葉は、蕩けるような口づけに飲み込まれる。

 他の誰にも水を挿せないくらいに熱くたぎる互いの想いを交わす。

 初めて抱いた淡い恋心は、いつの間にか決して消えることのない甘い熱情に変貌を遂げていた。



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