涙の嘘に、願いを込めて。
しばらく二人でふざけ合っていたら、聞き慣れたチャイムの音が耳を通る。

『あ、鳴った』
「ほら大樹、自分の席戻らなきゃ」
『うえーい』
少しだるそうに私から離れる背中は、数秒で振り返った。
『あ、永遠、今日一緒帰れる?』
「あ、うん、帰れるー」
『じゃあ一緒帰ろ』
バイバーイって自分の席の方に歩きながら手を振る大樹。
見えないと分かっているけど、私も大樹にバイバイ、って手を振る。

大樹が居なくなれば、辺りは静かになったと思ったのもつかの間、後ろから椅子を引っ張られた。
「う、わっ」
「色気のない声ー」
「どうせ色気なんてないですよーだ」
「あ、自覚してるんだ」
「うるさいー」
「で、何か用ー?」
後ろを振り返って聞いてみたら、頬杖をつきながらニヤニヤ笑う彩葉(いろは)が。

「え、どしたの?」
「いやー?君らは仲がいいですなーって思って」
「何それー(笑)」
「なんかさー、カップルなのに気取らないよね」
「気取るってどういうこと?」
「いや、だからさーなんか“私達付き合ってまーす♡”みたいな甘々な雰囲気出さないよなーって」
「あー、確かにねー」
「別にそんないちゃつかなくても充分幸せだもん」
「のろけやがって(笑)」
「のろけてないー!」
そう茶化してくる彩葉に少し怒りながらも、顔は熱くて。
…だって、ほんとなんだもん。

「あ、いや違うね」
「え、何が?」
「永遠もたまに甘々になるときあるからね(笑)」
「えっ…!?いやら私そんな甘えないし!」
「いやー永遠は甘えるときはものっすごく甘くなるからね」
「なにそれ…!」
そんなんにならないもん、とちょっとふてくされる。

「ま、それぐらいでいいんじゃない?」
「何が?」
「たまに甘々になっても」
「じゃないと、いつか取られちゃうよー?」
そう言って、人差し指を立てる彩葉。
指を指した方をたどれば、そこにいるのは紛れもない、大樹だ。

「大樹がどうかしたの?」
「永遠は鈍感だから気づかないかもだけどね、朝倉(あさくら)のこと」
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