結婚適齢期症候群
ショウヘイは壁にもたれて力なく座っていた。

頭からつま先までびしょ濡れで。

「何やってるの?どうやって下まで降りてきたのよ。」

ショウヘイに駆け寄って思わず叫んだ。

雨音で、私が叫んでも半分にかき消されてしまう。

「お前が戻ってこないんじゃないかって。」

雨音ではっきり聞こえなかったけど、そんな風に言ったように聞こえた。

「それで下まで松葉杖も持たずに降りてきたわけ?」

ショウヘイは頷いた。

「立てる?」

ショウヘイに自分の肩を貸した。

ショウヘイの腕を自分の肩に乗せて、ぐっと持ち上げる。

冷たくて重たい体が私の全身にもたれかかった。

そのまま壁にぐっと押しつけられる。

わざとなのか、単にもたれかかってるのかわからない。

ただ、顔を上げるとショウヘイの顔が私の正面にあった。

前髪から雨粒がしたたり落ちていた。

切れ長のきれいな目が私の目を捕らえていた。

雨のせいで泣いてるように見える。

きっと私も泣いてるように見えてると思った。

ショウヘイの口がわずかに動いた。

雨音のせいで、何を言ったのかわからない。

「何?」

聞き返すけれど、きっと私の声も彼には届いていなかった。

壁に押しつけられたまま、彼の口が私の耳元まで近づいた。

「・・・好きだ。」

そう聞こえた。

そのままショウヘイは私の耳に唇を当てた。

全身に電気が走ったみたいに震える。

嘘でしょ。

何かの聞き間違いだわ。

だって、

だってショウヘイは私のこと何とも思ってないんだもん。

思ってるはずないんだもん。

その時、ふわっと彼の唇が私の唇を覆った。

雨に打たれながら、息もできないほどのキス。

思わず苦しくなって、ショウヘイの胸の間に両手を入れた。

「どうして?」

苦しかったせいなのか、他に理由があったからなのか自分でもよくわからないけど、そう言いながら泣いていた。

こんな不様な姿で泣いてるとこ見られるの嫌なのに。
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