結婚適齢期症候群
11章 置いてけぼり
家に帰ってお風呂に入る。

やっぱり家のお風呂は落ち着く。

ショウヘイの家でのように、時間もシャワーの量も気にしなくていい。

ずぶずぶとバスタブに沈む。

何か考え事するとき、昔からバスタブに沈んだ。

もちろん、口の下きわきわまで浸かる程度で、本当に顔までズボン!といく訳じゃないけど。

呼吸ができるぎりぎりのところまで沈むと頭が冴え渡った。

でも、今日は違っている。

頭の中はとてもぼんやりとしていて、浮かぶことはショウヘイのこと。

昨晩の熱いキスと抱擁。

さっき元奥さんと親しげにしゃべってるところ。

それから、うずくまる私を見て、言葉を選ぼうとしている姿。


「お姉ちゃん、パジャマここに置いとくね。」

お風呂の扉の向こうでユカの声がした。

ユカと会話をするのも久しぶりのような気がする。

「ありがと。」

「お姉ちゃん、また振られたんだって?」

「は??」

「さっきお母さんが振られたんじゃないかって言ってた。」

「何言ってんのよ。久しぶりに家に帰ってきてそれはないんじゃない?」

ユカは扉の向こうでくすくす笑っている。

「だよねぇ。失礼な話だわ。私はそんな風には思ってないけどね。」

「あんたに何がわかるのよ。」

「お姉ちゃん、雰囲気変わったもん。きっといいことあったって思う。」

いや、そんなこともないんだけど。確かに昨晩はね。ちょっといいことあったけどさ。




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