君のために未来を見よう〜教王様の恩返し〜

 変身

あれから何時間眠ったのだろう。

窓の外には三日月が昇っていた。普段見上げている月と同じなのに、切っ先がより鋭く凜として、青白く感じられる。

このまま逃げているわけにはいかない。

フィーはドアノブに手をかけた。このドア一枚向こうでは、黒い恐怖がまた走り回っているかもしれない。

心臓の早鐘を無視し、ドアを静かに開けた。
ロウソクに火はともっていなかったが、室内は家具の配置がわかるくらいぼんやりと明るかった。

先程入ってきた入口が方位的におそらく北側で、正面の南側にはバルコニーに通じる大きな窓がたくさん作られていた。
カーテンが閉められていなかったため、月明かりが部屋を照らしていた。

(レイ様はいない)

まだ隣にいるのだろうか。
不自然なくらい静かだった。

今のうちに外へ出ようと部屋を横断していた時。

視界の端で、音もなく何かが動いた。
その瞬間、床に影が伸びる。
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