好きになった人は吸血鬼でした。ーさくらの血契1ー【完】



「いらっしゃいませっ」
 

母に連れられてやってきたのは、住宅街も離れた、少し山の中へ入りかけるような場所だった。


近いとは言えないけど、歩ける距離に黒藤も白桜もいたのか。
 

生垣で囲まれた敷地の間から見えた入り口辺りから、大学生風の女性が真紅と紅亜に手を振っていた。


初めて見る人だ。


ショートパンツにオフショルダーのトップス、靴はスニーカー。


動きやすさ重視のような恰好だが、肩より長い髪はそのまま垂らしている。


二十歳前後に見えるが化粧っ気はない。素で綺麗な人だ。


母は黒藤に呼ばれていると言っていたから、この人は影小路の人だろうか。


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