好きになった人は吸血鬼でした。ーさくらの血契1ー【完】
「……姉君様から見てもそういう母でしたか……」
黒藤は糸目になってむずむずするような顔をしている。
真紅の生まれに合わせて眠ったと言うのなら、黒藤が母と過ごせたのはほんの一年ほどだろう。
「影小路が嫌いって……後継者を継がないっていう選択肢はなかったの?」
真紅が疑問を口にすれば、黒藤は表情を変えないで答えた。
「あったには、あった。だが、母上は無涯を連れて来て、なおかつ家にいさせたいがために取引条件を出して当主になったと聞く」
また出た。『むがい』。
紅亜は知っているようだが、真紅は知らない名だ。
「……何回かその、むがいって名前を聞いたけど……」