もう一度、名前を呼んで2
再び

side ???


「俺たち,こんなことするためにここるいるわけじゃねえんで」

「抜けるってことか?」

「ハイ」

「そんな簡単に許されると思うの?」


こうして幹部と対峙するのは何人目だろうか。
やっと総長が満足に動けるようになりチームが機能し始めたと思っていたのに。

総長は未だ左半身の動きが鈍いようだが。頭は以前と同じようにまともに働いている。このまま水面下で勢力を拡大しつつ鳳狼の戦力を削れれば俺たちがこの辺りを牛耳れるのに…

そう歯がゆく思うが,きっとそれは総長も同じだろう。


「先週のやつらと同じことして抜けられると思ったら大間違いだからね」


口調は穏やかだが内心ははらわた煮えくりかえっているだろう。

先週抜けていったやつらは今後の生活に支障がでるレベルで腕をつぶした。他のチームに入って敵になったりしないように。

その前にぬけらやつらはしばらく満足に話も食事もできないだろう。舌に穴を開けてやった。


こいつらには…


「お前ら5人で殴りあいしな。最後に立ってたやつだけ抜けさせてやるよ」


そう言い放った総長の目はどんよりと濁っている。


ああ…去年のあの事件がなければここまで腐敗することもなかったかもしれない。

だけどもう遅い。

総長があんな目に遭ってもこうしてここに戻ってきたのは,鳳狼に復讐するためだ。

瀧沢だけじゃねえ。あの女も,メンバーも全員同じ目よりひどい目に合わせてやる,殺してやる,と医者のベッドで総長は誓っていた。


俺はただこの人についていく。


もう,後戻りなんかできないのだ。




「…やりあわねえなら,これ打つか?」


鳳狼にはまだバレていない。あいつらの戦力を削るために少しずつ撒いている薬は3度で人生めちゃくちゃになる代物だ…

“抜ける”とほざいたやつ等は,青い顔をしてお互いにじりじりと向き合った。






「あーあ,ほんっとつまんねえな」



持っていた注射器を握りつぶして,総長は言った。



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