捨てられた町
それはもう呪文のように頭の中で何度も何度も繰り返していた。


本当は怖くて仕方がなくて、全身から汗が噴き出している状態だった。


こんなに恐ろしい夢を見たのも生まれて初めてだ。


起きた時にみんなにおどろおどろしく話すことができるぞ。


だからもう少し頑張って……。


そう考えた時、森の中に人影が見えた気がして僕は震えあがった。


暗闇よりも更に濃い人の影は、ガサガサと音を立てながらこちらへ近づいているのだ。


まさか、怪物!?


その場に立ちすくみ目を凝らす。


すぐにでも逃げ出せるように体勢を低くして待った。
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