マリッジブルーの恋人たち
 玲奈よりかは短い付き合いだが、この男も俺の考えはよく分かってくれる。伊久斗が解るくらいだから、玲奈が俺が言いたいことを分からない筈がない。

「武藤だって分かってると思う。」

「俺だって、玲奈が指輪返してくるのは予想外だよ。」

「でも、あいつなら分かってくれる。あいつなら大丈夫だ。って思ってしまう気持ちが油断に繋がって、許されないこともあるよ。」

 結婚している男の言葉だからだろうか。

 重みを感じた。

 あいつなら分かってくれる、あいつなら大丈夫、そんな甘えがあったのは、否めない。

「本当に損してるとか思ってないんだろ?」

「……思ってないよ。俺は。……でも、本の少し玲奈はどうなんだろうって考えてしまったんだよな。」

 伊久斗が俺の顔をじっと見ているのが分かる。

 出会って10年、付き合って8年。

 そう思ってしまうのは、何故だろ。

「男にも、マリッジブルーってあんのかなぁ?」

 独り言の様に呟き、玲奈から返された婚約指輪を見つめた。
< 19 / 86 >

この作品をシェア

pagetop