あの夏の続きを、今


────放課後。


いつものように出欠をとった後、私は楽器と譜面台を持って、いつもの体育館横に行こうと、別棟の階段を下りていく。


ここからは、3年生の自転車置き場が遠くのほうに見える。


その辺りは、これから帰ろうとする3年生たちで溢れかえっている。


と、その時。


私の視線が、一人の3年生を捉えた。



────松本先輩………



また、胸がきゅうっと苦しくなる。


そして────先輩のもとへと走り出したくなる衝動に駆られる。


その衝動をぐっと抑えながら、いつもの練習場所へ。


この場所はちょうど、3年生の自転車置き場とは、体育館を挟んで反対側の場所にあたる。


譜面台を立てて、チューニング、基礎練習。


この音がどこまでも響いていくように、続いていくように、意識しながら。


姿は見えないけれど、遠くにいるはずの松本先輩に届いて欲しい────心の中では、自然とそう思いながら。
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