あの夏の続きを、今


寺沢先生がこの学校に来てから、それまで土曜日の午前だけだった休日の部活の時間は少し増やされることになった。


土曜日は丸一日部活になり、本番が近くなると時々日曜日の午前中にも部活が入ることになった。


今日は、初めての日曜日の部活。


いつものように学校に行き、音楽室に入る。


だか、その日は、いつもと違う出来事が起こった。


楽器の用意をしていると、アカリ先輩に続いて、私の見たことのない、私よりも少し年上に見える女子が音楽室に入って来た。


その人は、どこかの高校の制服と思われるブレザーを着ている。


私の周りの1年生や2年生は「あれ、誰?」「さあ……」などと話しているが、3年生の先輩は、その人を見ると「あ!シオリ先輩だ!」「シオリ先輩、お久しぶりです!」などと歓声を上げている。


どうやらあの人は、この吹奏楽部のOGのようだ。


トランペットパートの定位置にやって来たアカリ先輩が言うには、あの人はアカリ先輩のお姉さんで、今は高校2年生、つまり私やカリンから見て3つ年上になるのだという。


確かに、よく見てみれば、アカリ先輩を少し大人っぽくしたような顔に見える。



部員たちが着席し、出欠をとった後、その人は前に立って、話し始める。


「3年生の人はお久しぶりです、1、2年生の人は初めまして。

J中学校吹奏楽部の卒業生で、前の前の代の部長をしていた、前田 詩織(まえだ しおり)です。担当楽器はテナーサックスです。

今日は、私の通う東神高校の吹奏楽部の定期演奏会の宣伝に来ました」




────え、東神高校…………!?




それを聞いた瞬間、胸が激しく高鳴り始めた。


東神高校には、もしかしたら、松本先輩がいるかもしれない……!


松本先輩が東神高校に受かったのかどうかは分からないけど、もし受かっていて、吹奏楽を続けているのなら────


私の心は、期待でいっぱいになっていた。
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