あの夏の続きを、今


前の学校の演奏が終わった。


次が私たちの番だ。


私のソロは、曲の冒頭部分。


ステージへと進みながら、震える手を胸に当て、何度も何度も深呼吸する。


全員が席に着いた。私の左隣にはカリンではなく、トロンボーンの同級生がいる。しかし右隣には、いつもと同じように3人の後輩がいる。


『プログラム10番、O市立J中学校』


ステージの照明が明るくなり、アナウンスが入ると同時に、私は正面を向いた。


指揮台に立った寺沢先生が、指揮棒を構える。


それと同時に、私はすっと立ち上がり、真正面へトランペットを構える。


先生が振り上げた指揮棒の合図で、大きく息を吸う。


────そして、曲の始まり、トランペットソロ。


ゆったりと流れるような旋律を、たっぷりの息で響かせる。


この大きなホールの一番後ろまで、届くように。


────うまくやれるはず。


────カリンの分まで。自分を信じて。


そして、私は1度もミスすることなく最後の音を吹き終えた。


────やった!!


私は笑顔で一礼すると、再び席に着いた。


私はほっとして、次のフレーズのために楽器を構えた。
< 302 / 467 >

この作品をシェア

pagetop