あの夏の続きを、今


それから、私たちは平和祈念公園の中の慰霊塔や碑を巡り、その後は「ひめゆりの塔」などにも行った。


そして、バスに乗って、ホテルへと向かう。


修学旅行では、基本的にクラスで決めた男女混合の班単位での活動になる。


私たちの班の女子は、私と、ハヅキと、新しく出来た友達の「ミホ」の3人。


3人はバスの後ろの方の席に座る。私が窓側、その隣にミホが座る。ハヅキは、私の1つ前の席だ。


バスが動き出すと、ミホは通路を挟んで向こう側にいる別の班の男女とお喋りに花を咲かせ始めたので、話しかける相手のいなくなった私は音楽プレイヤーを取り出す。


イヤホンを耳にはめて、窓の外に広がる景色を眺めながら「じんじん」を聴く。


やっぱり、実際に沖縄の風景を見てからこの曲を聴くと、頭の中に思い描くイメージが、より鮮明になる。


特に、曲の中間部と、今日見てきた景色は、私の頭の中でしっかりと結び付いている。


明日や明後日は、美ら海水族館や琉球村、首里城に行ったり、国際通り周辺での班別自主研修があったり、マリンスポーツ体験があったりと、沖縄らしさが盛りだくさんだ。


ここで、前半と後半のテンポが速い部分のイメージに合う景色をたくさん見つけてきたい。


曲を聴きながら、1年生にはここの部分はどうやって教えようかな、などと考える。


────この春、吹奏楽部には全部で14人の1年生が入部した。


部員数の合計がA部門の人数制限の50人よりも少ないから、1年生も全員コンクールに出られる。また、例によって、指定された一部分だけを吹く形での参加だ。


トランペットパートに入ってきた1年生は1人。小原 桃恵(こはら ももえ)ちゃんという女の子だ。部員たちは「モモちゃん」と呼んでいる。


パートの後輩たちにはどんなお土産を買おうかな。そう考えながら、修学旅行のしおりの「おすすめ沖縄みやげ!」と書かれたページを読みながら、曲の後半部分の、明るく陽気なメロディーを聴く。
< 334 / 467 >

この作品をシェア

pagetop