SUMMER PARTY NIGHT


夜になると蒸し暑さも闇の中に紛れていく。


電車に乗り継いで待ち合わせの駅に到着すると、入社した時と同じ面々が揃っていた。


「服部。こっち、こっち」


同期で一番仲良しの中村さゆり(なかむら さゆり)が手招きして忍を呼ぶ。


「お疲れ」


「お疲れ。風邪は大丈夫なの?」


「今日病院行って薬貰ってきて飲んで寝たら少しよくなった」


「ならよかった。あっちでくじ引いておいで。男女ペア決めるらしいよ」


彼女が指さした方を見ると、心臓が跳ねる。


喧嘩をしたのは些細なことだった。


自分の買ってきたアイスを食べてしまったとか、引き金はどうでもいいような内容だったように思える。


大喧嘩になって、もういいと大きな声で叫んでLINEをブロックした。


もう二度と顔も見たくないとその時には、本気でそう思っていた。


かかってきた電話も着信拒否をして、Facebookですら規制をかけてありとあらゆるネットワークから彼を追い出したのは紛れもない自分自身なのに、こうやって彼の姿を見つけてしまうとどうしようもなく張り裂けそうな気持ちと共に、泣きたくなる。


そんなバレンタイン直前のことを真夏に思い出している。


「服部さん。どうぞ」


何事もなかったかのように、彼は私に箱を差し出した。


忍と呼んでほしいだなんてどの口が言えるだろうか。


「ありがとうございます……」


素っ気なく返事をして、くじを引くと番号が「3」と長方形の白い紙に油性ペンで書かれていた。


「……」

「……」


そこから会話はなく、忍はさゆりのいる場所へ戻っていく。


「番号何番だった?」


「3番」


「私2番」


ペアは誰なんだろうねとはしゃぎ合う。


庄司は一体誰とペアを組むのだろうか。


もうそんな風に心配する権利はどこにもないのだけれど。


アイス一つで喧嘩出来た時期をもう少し大事にすればよかったのだ。


そう思うと、やはり胸が張り裂けそうな気持になった。


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