先生、もっと抱きしめて
先生の車の中
き……気まずい…

逃げ去れずに私は今、マツタクの車の助手席に乗っている――。

隣では、マツタクが車を運転している。

マツタクらしい、国産のシンプルな車。
内装もシンプル。
香りはグリーン系。
クッションなどはない。

それにしても、できるんだなぁ、運転……。
それはヒロトとは違うところ。
大人だから、当たり前なのかもしれないけど。

どっぷり日は暮れていた。
対向車のライトがマツタクを照らしては、薄暗い空間に戻る。
そんなに都会ではないこの地域では、街灯の明かりも頼りないものだった。

「……ナビしてくれる?そんなに道詳しくないんだよ……」

「あ、ハイ……しばらくまっすぐで……」

「おし」

変質者が逃げ回ってるなんて聞かされたら、そりゃあ、送ってもらえるのは有難いんだけど。
状況が状況なだけに、気まずさが……。
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