先生、もっと抱きしめて
じっと俺にしがみついている三好の顔を、少し離れて確認した。
薄暗いが、なんとなく表情はわかる。

何も言わず、緊張しながら、俺の挙動を確認している。
そして少し、蕩けた瞳。

……泣くほど好きな元カレはどうしたんだよ?
実はちょっとだけ、妬いてたんだからな。

って言ったら、三好はどう言うだろう。


……本当に、今日は自分が自分じゃないみたいだ。

三好といると、俺じゃなくなってしまう――。


シャリ、と制服の衣擦れの音がした。俺のスーツと擦れ合った音だ。
真剣な目をした三好に、視線が釘付けになる。


「私、誰にも言わないから……」



可愛らしい唇。潤む瞳。

俺の失恋まで心配する、優しいところ。



「三好……」


メガネをダッシュボードに置いた。
俺は、その手で彼女の華奢な肩を掴むと、助手席に押し付け、顔を近づけた。
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