狼社長の溺愛から逃げられません!
 

「わかってるよ」

ちっともわかってない。
人も気も知らないで、犬や猫にでもいうみたいに、そんなに簡単に『好きだ』なんて言わないで欲しい。

からかわれてるだけだってことはわかってるのに、簡単に浮かれて喜んでしまう自分が悔しい。

頬をふくらませた私に、社長は笑いながら「こっちに来い」と命令する。

おずおずと近づくと、腕を取られ引き寄せられた。
社長の膝の上に乗せられて抱きしめられる。
お湯の中でも社長の素肌の感触や体温が生々しく伝わってきて、心臓が大きく鳴った。

社長の大きな手が、腰の辺りから背筋をなぞるように私の体をなで上げる。

「あ……っ」

それだけでびくりと体が跳ねる。恥ずかしくて誤魔化すように小さくもがくと水面がゆらゆらと揺れた。

「や……、待ってくださいっ……!」

泣きそうになりながらうつむいて社長の肩を押し返すと、社長に顔を覗き込まれた。

「こんな明るいところで、恥ずかしいです……」

明るくて広いバスルーム。こんなところで裸で抱き合うのが、恥ずかしくてしかたない。

 
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