狼社長の溺愛から逃げられません!
 

社長は、禁煙のイライラを誤魔化すためだけに、きまぐれに私にキスをするだけなんだ。そう思うと、胸が苦しくなった。

そんな私に、いつもは優しい古賀さんが強い口調で問い詰める。

「たしか有川さん彼氏いたよね?」
「あ、それは別れてしまって」
「じゃあ、今は誰とも付き合ってない?」
「えっと、そうです」

こくこくと首を縦に振ると、古賀さんがなにか考えるようにじっと私のことを見た。

「有川さん。じゃあ俺も頑張ってもいい?」
「頑張るって……?」

一体なにを頑張るんだろう。

そう思って首を傾げると、古賀さんがふっと柔らかく笑った。

「あ、あの。花の並び順があれでいいか確認してもらえますか?」

気まずくてその場の空気を変えるようにそう言うと、古賀さんも明るくうなずいてくれた。

ふたりでホールに飾られた花へと向う。
古賀さんの後ろを歩きながら、そっと指で自分の唇に触れてみる。
社長の唇の感触がしっかりと残っていて、思い出すだけできゅんと心がうずいた。

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