渇愛の契り~絶対王と囚われの花嫁~
一章 英雄王からの求婚


冷酷非道と噂される南方の国、イナダールの国王へ嫁いで五ヵ月が経った。

王妃として迎えられながら、カルディアは式典以外は城の使用人と同じように雑用を押し付けられ、戦で興奮して帰ってきた夫からは、暴力を奮われることもあった。


夫、ヘルダルフ・イナダールは、カルデアより十五も年上の四十歳だ。国王である自分以外の人間に権力は持たせず、虫けらのように扱っている、愛を知らない人だった。


「食事はここに置いておくぞ」

「はい、ありがとうございます」

「王妃様だっていうのに、不憫だねぇ」


そう声をかけてきたのは、兵士のトールだ。

城で王妃を働かせている。
そう、他国から噂され始めると、ヘルダルフは国の名に傷が付くと言って、カルデアを塔に幽閉した。

こうして厄介払いされたカルデアに、食事を届けてくれているのがトールだった。


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