渇愛の契り~絶対王と囚われの花嫁~
四章 砂漠の誘惑に、すれ違う想い


ナディア国に来て、一ヵ月が経とうとしていた。

ガイアスと丘に出かけてからは、カルデアも部屋の外へ出るようになり、今もマオラと庭園にやってきている。


「カルデア様、お飲み物をお持ち致しましょうか?」

「あ……えぇ、お願いします」


マオラと庭園を歩き、長く日差しに当たっていたせいか、体が熱を持っていた。

マオラはカルデアを庭園にある噴水の淵に座らせると、慌てて飲み物を取りに駆けていく。

それを見送ったカルデアは、噴水に映る自分の顔を見つめて、自嘲的に笑った。


「酷い顔……マオラに心配かけてしまったかしら」


今、カルデアの心に影を落としているのは、ガイアスへの想いだった。


(私では、ガイアス様の妻にはなれないというのに……。なのに、私はガイアス様を……)


一度結婚している身でありながら、真っ直ぐに想いを伝えてくるガイアスの事を、好きになってしまったのだ。



「そんなの駄目だわ、絶対に……」


カルデアは庭園で一人、頭を振る。

好きだからこそ、心も体も綺麗なガイアスに、汚らわしい自分は釣り合わない。

カルデアは引き返せなくなる前に、身を引こうと決めた。


それでも、部屋を訪ねてきては愛を囁き、時々あの丘へ連れ出してくれるガイアスを忘れられるはずもなく、カルデアは一人苦しんでいた。

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