紫陽花が咲く頃に
第1章

赤い傘と私と君




「なぁ、頼むって」



少し先に行った方に1組のカップル。
男の方は傘を忘れたのか、女の方に傘に入れてくれと頼み込んでいる。


「...もぅ!仕方ないんだから!」


そう言って入れてあげる女に対し「ありがとな」と微笑んでいる男。


なんともラブラブなカップルなのだろう。しかし、ここでやらなくても良くないか?と少しムスリとしてカップルを見つめる。



「...しかも何気に、女と傘同じだし」



相合傘をしてキャピキャピしながら帰って行くカップルを後ろから見つめる。


すぐ後ろからは「ハァ...ハァ...」と聞き慣れた息遣いが聞こえる。
後ろを振り向けばほら、


貴方がいる、

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