(完)嘘で溢れた恋に涙する
自分の家がある方からこっちに歩いてくる人影が見えてどきっとする。



ここは制服を着ている中学生がこんな時間にこんなところにいたら、たとえ知り合いじゃなくても話しかけてくる土地なのだ。



あっちの方には私の家しかないはずなのに…



不思議に思いながらも顔を背け、もう一度林に足を踏み入れた。



早く通り過ぎてくれた心の底から祈りながら、雨の音でよく聞こえない周りの音に耳をすませる。



しばらくして、ちゃぷちゃぷと水温とともに聞こえる足音が通り過ぎたのを確認しゆっくり振り向くと真後ろに人がいた。



驚いて思わず転びそうになったけど、それよりも先に口が動いていた。



「どうして…」



そこには片手に傘を、もう片方の手で杖をつき、立っているおばさんがいた。




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