幸せになる権利
たった1泊の4人のプチ家出。
子供たちは家出とは思わなかっただろう。

今の私なら分かるような気がする。
…あのときの母の気持ちが。




「映画おもしろかったな♪」
「また行こな~☆」
「良也、ええ子やったな~!映画館でも泣かんと、ホンマかしこい子やわ!」
「結奈も和也も、お母さんの子供はみんなええ子やで!」
「えへへーっ☆」


毎晩のように続く恐怖を忘れたひとときだった。




家に着くと、父は、見てもいないテレビをつけたまま、いつものようにリビングで寝転がっていた。

「…ただいまぁ。」
「おぉ…帰ってきたんか。どこ行っててん?」
「…オトン、ご飯食べたんか?」
「食うてへんねや。」

これが父の手だ。
暴力を振るっても、暴言を吐いても、最後に一瞬優しさや寂しさを見せる。


私もずっと騙されていたもんだ。



そしてやっと…
父が離婚に承諾した。

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