透明人間の色




イエスかノー。

絶対的正義の達也がなんて答えるかなんて、私は最初から知っていたけど、私は答えを聞くのが怖かった。

この間が一瞬でもあり永遠でもあったように思う。

やがて、私の耳に優しくて大好きな声が、私の予想した言葉よりも、もっと素敵な言葉よりもを紡いだのだ。




「………誰が否定しようと、お前が否定しようと、俺は肯定する」



私は笑った。




ゲームオーバーだ。



「それは、私の好きな達也じゃない」


「別に、お前の好みなんて聞いてねーよ」

「私も達也の意見なんて聞いてない。これまで通り過ごしていったら、私は私を肯定する達也にまた罪悪感で苦しむことになる。こんなにも歪な関係はないでしょ」

「………」

「達也、私たちは絶対上手くいかない」

「………」

「今日は楽しかった」


私は達也に背を向けた。

その瞬間視界が霞むのが分かる。


なんで、否定してくれないの。


私が誘導した答えなのにも関わらずそう思った。

「美香?」

受付の花が驚いた声を上げるけど、私にはその表情が分からない。

「どうしたの?」



「デートが、終わったの」


私はそれだけ言ってフラりとビルのエレベーターに乗り込む。




霧蒼は来なかった。
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