月華の陰陽師1ー朧咲夜、裏の真相ー【完】
十秒ほど黙った俺は、百合姫を見た。
百合姫は目をぱちぱちさせている。
基本的に、小路や御門の人間でない百合姫は仕事の話には関わってこない。
「百合姫や縁や天音がいるだろう」
「人間が百合姫しかいないじゃねえか。そうじゃなくて、その……」
「だからなんだよ。お前一人じゃカタ付けらんねえのか?」
「………」
黒が少し考えるように黙ってから、立ち上がった。
そして俺だけに聞こえるようにと囁いてくる。
「人間に惚れた鬼からの依頼、なんだ……」
「………」
……それは、こいつの得意分野かもしれないけど、こいつはやりたくない仕事だろうな。
だから俺はすぐにこう答える。
「請け負おう」