月華の陰陽師1ー朧咲夜、裏の真相ー【完】
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「華取桃子さん――」
真夜中を過ぎた鬼の屋敷。その一室で小さくなっている黒髪の女性の前に膝をつく。
「貴女が逢いたがっているのは、旦那さんか? それとも娘さんか? ……あるいは、弟か?」
最後の言葉に、桃子ははっと顔をあげた。
涙のあとがついた頬。どれだけのことがあってこの姿になったのか……。
「神宮美流子……貴女の名前だな?」
俺の誰何(すいか)に、桃子は唇を引き結んで真っ直ぐに見つめてくるだけで、応答はない。
「明日、神宮流夜と華取咲桜が出かける先を突き止めた。もし貴女がそこへゆく気があるなら、俺ともう一人の陰陽師――当代最強と言われる陰陽師が、責任を持って貴女を連れて行こう。ゆくかゆかないかは、貴女が決めることだ」
桃子は、ただ真っ直ぐに見て来る。
……昼、遣いに出した無炎は、華取咲桜と神宮流夜の写真も持って来た。
娘は母――桃子によく似た面差しをしていた。
桃子の血縁である流夜は、どことなく似ている、程度であった。