樫の木の恋(中)
じゅう


「ふふっ秀吉、怒られたなぁ。お主が怒られているところなんぞ、始めてみたぞ。」

大殿が部屋からいなくなり、明智殿もいれて三人になった途端に明智殿は口を開いた。

「趣味がいいとは言えませんねぇ。人が怒られているところを見たくてここにいたのでしょう?」

「大殿と久秀の事を話しておって、そこにお主らが来たんじゃよ。まぁ席を外さなかったのは、お主が怒られているところを見たかったからだがな。」

明智殿がにやにやと面白そうに笑っていた。
明智殿は坂本城というところの城主をしている。安土城は近いので、大殿が安土城に移転してからはよく来ているのだと言う。
まぁ小谷城も山を越えなくていい分、岐阜城よりは凄く近いのだが。

「はぁ…!なんとか首は繋がったな!久秀の馬鹿のお陰じゃなぁ。」

突如秀吉殿は畳に寝転がった。安心したその顔を見て、こちらまでほっとする。

「すまんなぁ半兵衛。こんな阿呆な殿で。心配かけてしまったよな。」

「いえ…」

「忠犬は飼い主が何をしたとしても従うじゃろうよ。なんせ忠犬じゃからなぁ?」

それがしが話そうとしたのに明智殿に横槍を入れられた。せっかく久々に秀吉殿とちゃんと話せるというのに。




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