御曹司を探してみたら

「“トモミ”か?」

名前を聞いて胸がざわついたのは、多分気のせいではない。

(トモミって……?もしかして女の人……?)

名前を呼び捨てするなんてやけに仲良さげじゃない?

なんとなーく面白くないものを感じながら電話の終了を待つ。

会話の内容はよく聞こえなかったが5分ほど経ったところで、武久が携帯をポケットにしまった。

「……出かけてくる」

「あ……うん。いってらっしゃい……」

話の続きを今か今かと待っていた私はすっかり拍子抜けしてしまい、出かけるという武久をそのまま見送ったのだった。

何を言おうとしていたのかはお預けとなってしまったが、武久が出かけて行ってむしろホッとしている自分もいる。

(ここから出て行けって言われなくて良かったのかも……)

最後通牒を突きつけられなくて安堵したのも束の間、まもなく別の問題が発生することになった。

……武久がこの日から、夜な夜などこかに出かけていくようになったのである。

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