いつも側で君を感じるから。


リストバンドから見えた手首の傷は、まだ新しいものもあった。

「お前の親父と話してーんだけど」

「ダメ!新のこと巻き込みたくないっ」

「んなこと言ってる場合じゃねーだろ!?俺はもうあの頃のガキじゃねーんだ」

しかしみなみが「やめて……本当に」と言いながら泣いて俺を抱きしめてくる。

「最近お母さんとお父さん、話し合ってるの……離婚するかもしれない。私達だけでちゃんと解決するから……大丈夫だからっ……」

手が震えている。

殴られても、父親の事信じてたんだもんな……。

俺ができることといったら、みなみが不安なときにこうやって側にいてやることだけだ。

それからまもなく、みなみの親は離婚し、父親は家を出て行った。

これで一安心だなんて思うのは間違いで、みなみの心の傷は深く、たまにその傷が疼く。

そう、まるで俺が父親と会った時に感じる、あの動悸のようなもの。

みなみも同じものを感じていた。
< 117 / 274 >

この作品をシェア

pagetop