いつも側で君を感じるから。

親父の方を睨むと、数ヶ月ぶりに目が合った。冷酷な瞳で俺を見つめている。


この瞬間、フッと昔の記憶が蘇る。
情ねえけど、近づかれると手が痙攣し、拒否反応が起こる。


「この前は俺の顔に泥を塗りやがって……また同じようなことがあったらただじゃおかないからな」


そう言ってリビングのドアをバタンと閉めた。

数ヶ月前、学校の奴らと派手な喧嘩をして親が呼び出された。

プライドが高い親父は、その事がよほど気に食わなかったんだろう。

でもそんなの知らねえよ。

てめぇのプライドなんてクソくらえ。


ガンッ!


震える手で玄関のドアを1発殴った。


拳に血は滲むが、痛みのおかげで震えが止まる。

消したいのに絶対消えてはくれない記憶。

精神的に落ち着く方法が、殴ったり、殴られたりすることだった。


あー、今から出かけんのに。

アイツのせいで気分ガタ落ち。

手の甲から血が流れ落ちていくのをただ呆然と見つめていた。

アイツと同じ血が流れていると思うと寒気がする。
< 92 / 274 >

この作品をシェア

pagetop