ばいばい、津崎。


大宮の家にちゃんと帰ったはずだけど、ここはどこ?

怖さというより、部屋にあるものはどれも懐かしくて、見覚えがあるものばかり。

このテーブルもベッドも本棚に並べられている漫画も全部、昔私が使っていたもの。そしてこの部屋は……。

私は慌ててカーテンを開けて、窓の外を見た。


「……嘘、でしょ……」

そこには瓦屋根の家が並んでいて、ふわりと熱風によって潮の香りが鼻を通り抜ける。


私は夢でも見ているんだろうか。

確かめるために急いで玄関に向かって、無造作に脱がれていたビーチサンダルを履いた。ペタペタと、家からまっすぐの坂道を駆けおりる。


「……な、なんで」

私の瞳に映るのはダイヤモンドのように太陽の光を反射しているコバルトブルーの海。

それは、もう二度と見ることがないと思っていた島の景色だった。

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