嘘は輝(ひかり)への道しるべ
 真二は仕事が終わり、スタジオから少し離れた喫茶店へと足を向けた。

 あまり時間の無い中で愛輝に会えるひと時は、真二にとって大切で安らげるひと時だ。


 喫茶店に入り店の中を見回すと、愛輝が真二に向かって手を上げた。
 真二は愛輝の姿に、愛しさを感じる。


 愛輝の前に座り、近くにいた店員にコーヒーを注文した。


「今度また、ミュージックビデオの撮影が始まるな」

真二は、もうすぐ始まる愛輝との仕事の話を口にした。


「うん。また、一緒に仕事出来て嬉しいね」

 愛輝が嬉しそうな笑顔を見せる。


「ばか! ヒカリでいる時は、あまり皆の前で声掛けるなよ……」


「うん。分かっている。もっと、一緒にいられたらな……」

 愛輝が、少し寂しい目を落とした。


「そうだな…… いつか、そんな日が来るよ」

 真二は手を伸ばし、愛輝の頭を優しくなでた。

 いつか、愛輝とずっと一緒にいられる日のために、真二はどんな偽りでも守りたいと強く思った。

 


 店を出た真二は、愛輝の肩を抱き人波の中へと消えた。


 建物の陰に身を隠すように、あゆみが冷たい目で見ている事など、気付かないまま……

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